『川井昭夫/絵画から植物へ、植物から絵画へ』  あとがき

      

「見えないように」表現することが私の方法論です。
ですから、図版でそれを伝えることが、はなはだ困難であることにやっと気づいたのです。
そこで、厚かましくも拙文を添えることとしました。
真言密教では、ことばで言い表せないことを図画(曼陀羅)をもって説くとしています。
しかるに私の有り様は、それに逆らうのです。
人並みに世の習いに添えない我が身の無念さを、また知るのです。

80年代以降、私の意識の中で植物(草)が肥大しつつあります。
美術における造形性の矮小化に反比例するように。
そしてこのことは、意外にも私の中に巣食って来た厄介な自己矛盾を解消しつつあるように思われるのです。
もっとも、こういう場合の作家の言は、うつろいやすく信ずるに値しないとよく云われるのですが。

川井昭夫 2002.3.10

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