『川井昭夫/絵画から植物へ、植物から絵画へ』p.8 草について
バブルの盛りに、町中の彼方此方に空き地が現わた。そこには何時しか草が生えた。
 草は、かって一時は栄えたであろう消え失せた建物とそこに生きた人々の記憶を養分に生きているように見える。
 このような捉え方は、神秘主義者のようだが、あらゆるものには属性が付着している。とりわけ「草」には、遠い時間を繋ぐ懐かしい記憶とでも言うべきものがあり、私を魅了して止まない。
『土の記憶』1996年 野積記 富山県八尾町赤石 photo:sakae nanbu