KAWAI AKIO
  川井昭夫

   美術手帖 1982.10 展評

調色82ー4

麻布にアクリル 210×128cm 1982

赤津  侃

 川井昭夫はカンバスの基になる麻地にひかえめに手を加える。その変型四角形の片側を折り返す。裏側にこれまた目立たないように色をつける。素材に近い色、たとえばグレイに似た色彩を塗る。ドゥローイングといってもよい。作品ごとに、この色彩は微妙に変化している。作業としては、一つの「折る」「塗る」。創る行為を最小限に抑える。この結果逆にはっきりと見えるものが出てくる。単純といってよい作業の痕跡が自由な吸い込まれるよう空間をつくり出す。その想像空間は独自の世界だ。そこに洗練された感性の発露をみる。その色彩を彼は「調色」と呼ぶ。微妙な色合いずくりに腐心する。繊維に食い込んだ絵具が織りなす色の諧調に新鮮さがあり、ぎりぎり抑制した行為が受け手に大きな連想作用を呼び起こす。

   川井昭夫展 コバヤシ画廊 1982.7.19-24